シン・島根県立美術館!建築ツアーへ参加してきました

島根県立美術館ロビー名建築
広告
広告

島根県美が帰ってきた

島根県立美術館正面

2021年5月25日より改修工事のためにお休みしていた島根県立美術館(略して、島根県美)。
およそ1年間の休館を経て、6月1日から再開館しました(パチパチ)。
年間パスを持っているヘビーユーザーの私としては、待ちに待った日です。
記念すべき最初の企画展は7月1日から、あのチームラボがやってきます。

ワクワクが止まりませんが、今日は別のお話です。
今回の改修工事によって美術館のどこが変わったのか、そのポイントを教えてくれる建築ツアーに参加してきました。

安全性を高めつつ、菊竹建築を守り伝える工事

今回の建築ツアーの講師は、島根県東部県民センターで建築課長をされている山本大輔さん。
改修工事においては総括監督員という立場で、全体を指揮されていたようです。
私、Twitterのフォローもしています。

島根県立美術館ニュース冊子
島根県立美術館ニュースリーフレット

改修工事の概要や途中経過などは、「島根県立美術館ニュース」リーフレットのvol.91~93にかけて
「山本建築課長の美術館改修工事通信」として3回の連載がありました。
それによると、安全性に関しては平成25年の建築基準法の改正により、天井の安全基準の明確化を受けてのものということです。
工事では他に空調や照明設備の交換もありましたが、ツアーでの解説の中心はこの天井に関してでした。
そして、この天井の造形がまさに菊竹建築の哲学を大いに表すものになっていました。

2021年2月の菊竹清訓展の時のロビー。
島根県立美術館ロビー
改修工事後の天井の様子


宍道湖のさざ波を模したような曲線をもつこの天井は、以前は細長いアルミ板(アルミスバンドレル)をつなげた吊天井でした。これが結構重く、災害などで落下してきた場合危ないということから、今回より軽量化し、安全性を高めるために採用された素材がグラスファイバー製の膜天井です。


菊竹清訓が美術館に込めた思いを受け継ぎつつも、時代に合わせた改修工事が見事に完成されました。

普段は見ることのできないバックヤードにも入れたぞ

私が参加した建築ツアーは2回目の6月12日。定員が15名のところ50名を超える希望者がロビーに集まり、無事?に全員参加できました。
講師の山本建築課長はこれまでも島根県内の菊竹建築の改修工事に携わり、菊竹建築イズムを身をもって体感されてこられました。

私が今回のツアーで良かったと思ったこと

  • 膜天井の実物に触れることができた
  • バックヤードで裏から表を見ることができた

専門の職人たちが手作業で1枚づつ膜天井を張っていったのですが、それぞれが異なる曲線をたるませることなく張るのはいかに大変だったか。

島根県立美術館幕天井
実際使われた膜天井。吸音性があり、ザラザラしたまるでテントのような帆布のようなしっかりとした布でした。


実際に膜天井に触れてみると、グラスファイバー製のそれは想像していたよりもしっかりとした(当たり前ですが)材質感です。

島根県立美術館
バックヤードから見た天井の様子

案内されたスタッフ専用のバックヤードの一室からは、その膜天井の目線で張っている様子が分かる窓を案内されました。

島根県立美術館天井
天井の様子。膜天井用の布を職人さんの手作業でつなぎ合わせて設置している。

中2階のアートライブラリーで菊竹建築の神髄を体験する

これは改修工事とは直接には関係のない話ですが、菊竹建築の凄さを身にしみて感じたエピソードを紹介します。
島根県美は入り口から館内に入ると、ガラスに隔てられた先に雄大に広がる宍道湖畔が見えます。
湖畔の曲線に沿うように美術館も建てられていて、ガラスの壁といっても緩いカーブを描いているため、内と外がかっちりと隔てられている感じがしません。
夕暮れ時になると館内はオレンジ色に染まります。そのため、冬期を除いて閉館時間が日没後30分と案内されています。

模型も見せていただきました。上から見た島根県立美術館。
島根県立美術館中2階にある椅子
中2階にあるソファー。上から見た美術館の形のよう。


さて、1階はロビーを囲むようにして企画展示室、講演などが行えるホール、ミュージアムショップ等があります。
2階には主に所蔵作品を常設している展示室が5つあります。
その1階と2階の間に、中2階としてアートライブラリーがあり、アート書籍や過去の図録などを自由に閲覧できる空間です。
この場所の高さと広さがどのようにして決まったのか、山本さんから手すりの位置まで進んで、そこから宍道湖方向を見てください、と言われました。
すると、1階のロビーからは見えていた対岸の建物がすっかり姿を消していて、手前の湖畔とガラス上部に若干湖面が見える感じです。
この絶妙な距離感を決めるために、何度も計算したそうです、と解説されました。
つまり、この高さと広さから目に映る景色こそが、菊竹清訓の狙いだと言うのです。
なんと、雄大な宍道湖の風景から少しずつ気持ちを切り替えられるように、美術展示室へ誘うこと。
静かに落ち着いた精神状態で作品と向き合えるように、との配慮の表れだというのです。
菊竹清訓という建築家は、そんなことにまで思いを込めて設計していると知り、本当に驚きました。

島根県立美術館から見る宍道湖
美術館の目の前にはすぐ宍道湖

外には一面宍道湖の風景が広がりますが…
↓↓↓
中2階、2階へ上がると見えなくなる仕掛けになっているとのこと。

島根県立美術館ロビー中2階から見た様子
中2階から見た様子。だんだん宍道湖が見えなくなる感じ。これが2階に上がると宍道湖が見えなくなるから不思議!

最初に年パス持っているヘビーユーザーと言っておきながら、知らないことばかりでとても貴重な経験ができたツアーでした。
島根県には菊竹建築はまだまだありますので、このような企画がまたやってくれればいいな、と思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

島根県立美術館について

島根県立美術館

島根県立美術館

島根県松江市袖師町1-5
TEL:0852-55-4700

7月~は…あの!チームラボが来ます!
チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち

チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち | 企画展 | 島根県立美術館
宍道湖岬に立つ島根県立美術館は、水との調和をテーマにした美術館です。国内外の絵画をはじめ、版画、工芸、写真、彫刻などを展示しています。

建築ツアーの講師をしてくださった山本大輔さんのTwitterはこちら

建築のことをよく発信していらっしゃいます。
興味がある方はぜひ!!