北欧~フィンランドデザインを象徴するブランドの一つ『イッタラ』のガラスを見に~島根県立石見美術館へ

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき 島根県立石見美術館美術
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島根県立石見美術館で開催されていた「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」に行ってきました。展覧会は6/19(月)で終了となりましたが、どんな内容であったのかレポートします! 今回展示の様子は撮影OKでした。気になった作品も一緒に紹介します。

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創業は明治14年

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき

イッタラが創業を開始したのは1881年(明治14年)です。そこからおよそ140年、今ではフィンランドを代表するブランドの一つと言えるでしょう(その長い歴史の中で、オーナーの変遷はありますが)。
本展の第1章は「イッタラ140年の歴史」と銘打たれた、イッタラの歴史が年代順で紹介されています。各年代を代表するガラス製品の展示と合わせて、分かりやすく説明がされていました。

定番を作り上げた人々

第2章は「イッタラとデザイナー」。イッタラにおいて定番と言われるようなガラス製品の数々を作ってきたデザイナー8名が、その作品とともに紹介されています。
決して1点ものではない、当時も量産化の商品として作られたものなのに、つい作品と呼んでしまう魅力がそれぞれにありました。
「北欧雑貨図鑑フィンランド100」という本を図書館で借りていたのですが、”名作を生んだフィンランド生まれのデザイナー”という章があります。

北欧雑貨図鑑フィンランド100

ここでは20名のデザイナーが選ばれています(ガラス製品のデザインに限らず)。そして、なんとその20名のうちの6名が本展覧会で紹介されているデザイナーでもあるのです。
北欧の雑貨や家具が好きな方にとっては、お馴染みの方々でしょう。

アイノ・アアルト
アルヴァ・アアルト
カイ・フランク
タピオ・ヴィルカラ
ティモ・サルパネヴァ
オイバ・トイッカ

私は特にカイ・フランクが好きで、後述する第4章では日本との関わりについても紹介されていました。ちなみに、妻はオイバ・トイッカの名作〈バード バイ トイッカ〉に魅了されていました。
こうして名前を見ているとそれぞれのデザイナーがすごいのはもちろんですが、その個性や美意識の違いをも受け止めて、イッタラの製品として成立させてきた企業文化や風土がまたすごいのではないかと思えてなりません。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
妻が好きだったコーナー②

今回のベストワンはこちら

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき

ボウル《ムナンクオリ(卵の殻)》グンネル・ニューマン、1947年
〈ミメーシス 自然の模倣〉というスペースに展示してありました。
ガラス製品に限ったことではありませんが、フィンランドデザインにおいては自然からインスピレーションを受けた、自然をモチーフにしたデザインは特別な感覚で作られたものではありません。身の回りにある自然の風景は、誰にとっても公平にそこにあるものです。1930年代以降にはそうしたフィンランドの自然がどんどんとデザインされていきます。その中に突然、現われたのが《卵の殻》。「なんで、また、そこにいくかな~」が率直な心の声でした。しかしながら、とてもきれいな白色で、光の艶やかな感じも良く、造形の曲線も人工的な感じがしない、緩やかなカーブで誰かが大きなゆで卵の殻をそこに置き忘れたかと思ったくらいです。保存状態の良さもあるのでしょうが、とても1947年に作られたとは思えませんでした。

まるでバックヤード見学!?作り方などの展示が良かった

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき イッタラを読み解く13の視点

展覧会の第3章は「イッタラを読み解く13の視点」。この章はまるで裏方、バックヤードを見せてくれるような展示内容でした。それはイッタラの工場見学をしている気分です。
デザイナーがどんなに素晴らしいデザインのグラスやプレートを描いても、それを実際に形にするには職人たちの経験や技術が欠かせません。
完成品とそれを成型した型が並んで展示してあったり、イッタラが誇るカラーガラスのサンプルが置いてあったり、ととても興味深いコーナーでした。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき ガラスのサンプル


有名な《アアルト ベース》のスチール型と木型の違いで、ガラスの表面にできる揺らぎの感じの対比は興味深いものでした。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき 《アアルト ベース》のスチール型と木型
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき イッタラを読み解く13の視点
このデザインの柄の型が、この下の写真
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき イッタラを読み解く13の視点
こんな感じで作られるのか!とガラス製品の型を見るのは初めてだったのでびっくりした。

コラボレーションでイッタラの懐の深さを知る

第4章は「イッタラと日本」で、イッタラと日本人とのコラボレーションが紹介されていました。
イッセイ ミヤケ
ミナ ペルホネン
隈研吾
との、協働による商品や店舗デザインが展示されていました。

ミナ ペルホネン


しかし、私が特に関心を抱いたのはカイ・フランクと日本との関わりです。カイ・フランクは3回も来日していて、その滞在の折には日本の陶芸家の工房を訪れたりしていました。
また、京都の龍安寺など日本の伝統や歴史的な造形物に大いに関心を持ったようです。日本で得たイメージで作ったとされる食器も展示してありました。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき カイ・フランク


フィンランドと日本では気候や風土は違いますし、自然と括っても森や川や湖など植生や成り立ちは随分と異なる面もあると思います。
しかし、そこから得られるヒントやアイデアなどの発想の源になるものは、同じなのかもしれません。

関連グッズのクリアファイルが素敵だった

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき クリアファイル

毎回記念にクリアファイルを購入し、コレクションをしている私です。
イッタラ展のものは見開きタイプで豪華な作りになっていました。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき クリアファイル

〈バード バイ トイッカ〉のデザインのものだったので、妻も欲しい!となり2枚買って帰りました。
他にも、マグネットやピンズ、手ぬぐいなど可愛らしいものがたくさん販売されていました。

我が家にもあったんだ~イッタラ製品

ティーマのカップ

なんだか福山雅治さんの歌のタイトルのようですが、お恥ずかしい話をひとつします。
イッタラの製品の中では、カイ・フランクのものが良いなあ、特にティーマとか、なんて思いながらこの記事を書いていました。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
このシリーズが好きなんですよね。


パソコンの横に置いていた、ホットカフェラテを飲んでいた水色のカップを手にして、ふと公式サイトの商品一覧のページを見ていて、あれっ、ちょっと似ているかも。
恐る恐る、飲み干してからカップの底面を覗いて見ると、「i」の文字が……。

ティーマのカップ


言い訳ではありませんが、自分で買って物ではありません。家族がプレゼントでもらったものです。カップを洗うこともあったし、たまにこのカップでコーヒーを飲むこともある…もう5年以上は目にしています。
なんとも、既にイッタラユーザーとして暮らしていたことを知らされた、という話しです。
これから珈琲を飲むとき、少し味わいが変わるかも。

<余談>創業された明治14年の山陰の様子

ちょっと余談ですが、、この明治14年は山陰両県にとってはターニングポイントとなる年なんです。とっとり県民の日が9月12日であることをご存じの方もいると思いますが、なぜこの日になっているのか。
1871年(明治4年)の廃藩置県により国内の境界線が大きく変わりました。そのような中で、1876年(明治9年)に現在の鳥取県の一部が島根県に併合される事態が発生し、反対運動も長く続きました。
そして、1881年(明治14年)9月12日に併合されていた土地が鳥取県に戻り、再置されて現在の鳥取県になりました。
遠くフィンランドでイッタラが創業された年に、山陰両県においてもある種の始まりとなる年であったのですね。

(参考)
とっとり県民の日/とりネット/鳥取県公式サイト

とっとり県民の日/とりネット/鳥取県公式サイト
鳥取県公式ウェブサイト とりネット

イッタラ展について

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
企画展「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」

2023.4.22(土)~6.19(月)
島根県立石見美術館 ※終了しました

2023.7.1(土)~9.3(日)まで長崎県美術館でも開催予定
詳しくはこちらをご覧下さい。

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき Iittala - Stars of Finnish Glass
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき Iittala - Stars of Finnish Glass の公式サイトです。
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
ちなみにこの鳥さん、うちで暮らしている猫と柄が似ていたので記念に写真に残しました。