〇〇の秋がやってきました。
本日の〇〇に入るのは、ベタですが芸術です。中国地方だと、瀬戸内国際芸術祭が有名ですが、2024年に岡山県で初開催される芸術祭があります。
「森の芸術祭 晴れの国・岡山」について
会期:2024年9月28日(土)─11月24日(日)
開催場所:岡山県北部12市町村が開催エリア
(アート作品が設置されているのは、津山市・新見市・真庭市・鏡野町・奈義町)
※鑑賞パスポートを購入すれば、1会場につき1回の入場が原則できます。
新しい「やくも」に乗って。
今回、ご紹介するのは津山城周辺エリアの一部ですが、その前に。
電車好きの方はもう乗車している人も多いでしょうが、新型やくも273系です。明るすぎないオレンジ色のアイアンマン、と思ったのは私だけでしょうか。
行きは話題になっていたセミコンパートメント席に、帰りは普通車席に乗りました。普通車席も前の座席との間隔が広くてゆったりくつろげましたが、行きに座ったセミコンパートメントが快適すぎました。靴を脱いで足を伸ばせるなんて、本当に家にいるようです。
また新型やくもの乗り心地は別で記事をUPする予定です!
レンタサイクルを借りてアートを巡ることに。
津山駅に到着したのが午前11:34で、帰りは午後5時前には津山駅に戻ります。無料のアート循環バスも走っていますが、今回はレンタサイクルを選択しました。町並みを散策したい、バスの時間に縛られずに自由に移動ができるかなと思ってのことでした。当日は天気も良く絶好のサイクリング日和でしたが・・・色々たいへんでした~後半で書いてます。
いきなりの「PORT ART & DESIGN TSUYAMA」で津山市の建物観光の兆しをみた。
芸術祭は美術館で開催される展覧会とは違い、どこからどのように見て回るかは自由です。
と言うわけで、向かった順番で紹介していきます。
最初に訪れたのは、こちら「PORT ART & DESIGN TSUYAMA」です。どんな建物かと言うと、公式サイトに簡潔に書かれてあるのでそちらを引用させていただきます。
大正9年に竣工した「旧妹尾銀行林田支店」を芸術文化の創造・発信拠点として整備した施設。岡山県指定重要文化財に指定されており、赤レンガタイルで敷かれた中庭、神社仏閣を想わせる木造の本館、石造りの金庫棟、赤レンガ倉庫が建ち並ぶ構成を持ち、大正ロマン期の華やかな建築様式と往時の市井の面影を今に伝えている。
https://forestartfest-okayama.jp/exhibitions/venues/venues08/
和洋折衷という表現がありますが、まさにそのような建物です。中に入ってみると、いったいここはどこの国だろうかと不思議な気持ちになりました。中庭のところに立って、こっちを向くと和風なのに、あっちを向くと洋風みたいな。
ここでは2名のアーティストの展示が見られます。
パオラ・ベザーナさんはテキスタイルのアーティストとありましたが、展示されている作品はまるでエッシャーの騙し絵のような、あるいはトリックアートのように思いました。テキスタイルとは布地のデザインであるという認識でしたが、どうもそれだけではないようです。布とは異なる素材を組み合わせた立体作品が、これはどこから順番に作っていったのだろうかと、頭をひねる作品に驚きました。
志村信裕さんの作品の一つは天井にあります。銀行だったときは窓口だった場所でしょうか、豪奢な天井に映し出された光の映像は万華鏡のようです。不規則な動きは眺めていても飽きません、まるで、焚き火の火を見ているような。おっと、時間があっという間に過ぎてしまいそう。
お昼は人気の豆腐を食べに。
昼食は「津山城東とうふ茶屋 早瀬豆富店」に行ってみました。
日曜日のメニューである「豆乳おうどん御前」をいただきました。
豆腐屋さんの大豆づくしの皿がずらっと並んでいます。しかも、寄せとうふや厚揚げなどには、こちらが相性が良いですよ醤油もテーブルに置いてあります。同じ大豆という原料から、こんなにも風味も食感も異なる料理ができるなんて。お腹に優しいランチでした。
ただ、小声で反省させてください。美味しい食事にお土産に買った豆乳ドーナツにも満足しました。しかし、芸術祭で人気店に行くならば、予約可能であれば予約しておくに越したことはありません。ちょっと待ち時間が長くて、残りの行程の時間配分がキツキツになってしまいました。
初めて訪れた場所で、アートも食も楽しもうと欲張ってしまったのが反省点です。まだまだ、芸術祭の楽しみ方は初心者だと痛感しました。
純・日本家屋に奇妙なインスタレーションを発見。
お腹もいっぱいになり、再び森の芸術祭へ。
次に訪れたのは、歴史を感じる「城東むかし町家」です。こちらの建物は梶村家という方々が住まわれていたところで、「旧梶村家住宅」として平成9年に国登録有形文化財(建造物)に、「旧梶村氏庭園」は平成24年に国登録記念物(名勝)に指定されています。
しかし、この芸術祭の期間に限っては異様なモノものが建物内に存在しているのです。
入口からまず目に入るのは、稲ワラ?ではなく刈り取った小麦の壁です。床から天井までびっしり。圧倒されます。華道家の片桐功敦さんの作品です。
さらに内部へ進むと今度は何やら音が聞こえてきます。音の出所に吸い寄せられると、これは某ピタゴラスイッチ的なもの?和室に似つかわしくない構造物が置かれています。タレク・アトゥイさんの作品。子ども達もどのような仕組みになっているのか、興味津々に見ていました。
庭園に出て矢印の方面に進むと、茶室があります。趣があります。八木夕菜さんの作品です。《茶徳》という作品で部屋の中央に置かれてあった茶葉は、地域で長く飲まれている美作番茶だということです。と、帰ってから調べてみて知りました。
実は最も気になっていた「津山まなびの鉄道館」
もう、どうしてここだけ閉館時間が早いんだ、なんて魂の叫びは心に留めておきます(最終受付15:30/閉館16:00と明記されています)。久しぶりに走りましたよ、「城東むかし町家(旧梶村邸)」から。前述のとおり、レンタサイクルを借りて移動をしていたのですが、パンクしてしまうトラブルが発生してしまい、やばい間に合わないかも、という事態になりました。足がパンパンで呼吸が荒いまま、15:27に受付に到着できました。
「津山まなびの鉄道館」は駅裏というか、メインの北口広場側ではなく線路を挟んで反対にあります。鉄道ファンも数多く訪れる施設で、芸術祭で鑑賞できるのは韓国出身のキムスージャさんの《息づかい》です。旧車庫の壁面の窓ガラスにたくさん貼られたプリズムシートで、時間の経過による太陽の影響で車庫内を照らす光線の変化が楽しめます。
ちょうど夕方近くになると西日が当たり、プリズムな光が車庫に収まっている列車にも神秘的に当たっていました。閉館時間が迫っていましたが、どの構図が良い写真になるのかウロウロとみんな歩いていました。
本日、最後の会場で絵画を見ることができた。
帰りの時間も迫り、「津山まなびの鉄道館」から近いところを最後に行ってみようと向かったのは「作州民芸館」です。設計したのは江川三郎八という方で、今では「江川式建築」と呼ばれることになる多くの建物を岡山県内で建てました。
作州民芸館は現在、国の登録有形文化財となっています。左右対称の重厚な石造りの建物に見えましたが、実は木造建築と聞いて目を疑いました。平成4年に津山市が取得し、今は「津山まちの駅城西」として活用されています。
森の芸術祭の期間中は2階が展示スペースになっていますが、普段は津山市の伝統的特産品が常設展示されているようです。今回は5名のアーティストの作品が見られます。
ムハンナド・ショノさんの作品は機械仕掛けの生き物のようで、砂の上をゆっくりと不規則に動いていました。砂が波紋のようになるさまは、とても面白いです。
川島秀明さんの絵からは明るいポップな印象を受けました。が、描かれている人物が後ろ姿であるところに、妙な胸騒ぎを感じました。
スミッタ・G・Sさんの絵はまずは大きさと色使いに圧倒されます。しかし、近づいて細部を見ると、実に様々な人や生き物が描かれています。森を地球に見立てて、多種多様な生命が息づいていることを思わされます。
染谷悠子さんの絵は水彩画かと思いましたが、キャプションを読むとかなり複雑な構造になっているようです。先の2名に比べると余白が多く、サラッと見てしまいがちですが、山の中腹に少女の顔が描かれていたりと、実は怖い絵なのかもしれません。
多彩なアートに触れた時間でした。
文字通り、駆け足で巡った津山市での森の芸術祭。見られなかったエリアや作品もありますし、普通に町並みや名所旧跡にも行きたかった。昔ながらの火消しのやぐらみたいな長いハシゴが立っていたり。城下町の名残と大正ロマンが絶妙にマッチしているようです。
芸術祭についてはヨコハマトリエンナーレの時にも思いましたが、事前の予習のしすぎによって、いざ作品と向き合ったときの新鮮さが失われるのではないか、という心配を常に感じています。逆に知らないまま鑑賞し、面白いところを見落としてしまうなんてこともあります。帰ってからそんな意味があったのかと残念がるみたいな。アート鑑賞の正解のなさに戸惑いつつ、それこそが楽しみであると思いたくもなります。
今回は短い時間ながらも、津山市の魅力が分かったように思います。古き良き、なんて言い尽くされた表現ですが、本当に大切にしていきたいモノや場所を、地域全体で守っている印象を受けました。今回、行けなかったところはまたの機会に訪れたいです。
森の芸術祭はまだまだ他のエリアでも開催されています。なかなか気軽に行ける場所ではないですが、鑑賞パスポートは会期末までは利用できるので、もう一カ所くらいは行きたいと思っています。