さて、益田市Art Driveの後編は島根県立石見美術館で2022年8月29日(月)まで開催されている
企画展「平川紀道・野村康生 既知の宇宙 未知なる日常」です。
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お二人とも島根県出身のアーティストです。
いったいどんな作品を作っているのでしょうか。
現代アートの前ではあまり考えない方がいいと気が付いた
野村康生さんは1979年生まれで益田市のご出身。
今回、展示されていたのは「InsideOut/インサイドアウト」というタイトルの巨大なインスタレーションです。
天井から吊り下げられた大きなドーム状の物体の下には、仰向けに寝っ転がって見上げられるようにベンチが置いてあります。
そういうことならと、ひとまず言われた通りにその姿勢で見てみましょう。
摩訶不思議、自分の体がすっぽりと万華鏡の中に収まったかのような気分になります。
透明なドームの中には、赤や緑や黄色など鮮やかな色で彩られた三角形の集合体がゆっくりと回転しています。
劇的に何かが変化しているわけではないのに、まるで波の満ち引きや焚き火のように飽きずに見ていられる作品です。
あと、展示室内には不思議な音が流れていました。
音自体は不思議なものではありません。まず、耳に入るのは鳥がさえずる声。
合間には「ゴォー」という強風のような音も聞こえます。
しかし、どうもちがう。寝っ転がったまま耳に意識を働かしていると、これはバイクが走る音だ。
鳥の鳴き声に自動車のエンジン音、それはつまりどこにでもある街の暮らしの音です。
目の前には非日常の物体があるにもかかわらず、生活の音楽が鳴っています。
それが結びついたときには、すごいギャップだなと思いましたが、だんだんとこれはギャップの面白さを表現しているのではないと思うようになりました。
ギャップといえば仕事着と私服のちがいとか、その落差が大きいほど興味や関心を引くものですね。
しかし、この展示室の空間は初めこそギャップ感がありましたが、徐々に調和が広がっていきました。
日常と非日常の違和感は、自分の気持ちがそのどちらかに寄っているために違和感と感じるだけで、一度はまってしまうともう離れません。
その場に慣れたと言ってしまえばそれまでですが、物体にも音楽にも何の思惑も企みもないのでしょう。
最初からそこに存在していたかのごとく、違和感であったのは私自身なのかもしれません。
つまり私がその世界に馴染むことで、作品の一部になり得た感覚です。
巨大なインスタレーションを目の前にして、これは何だろうかという考えを止めることで、その世界の一員になれたのでした。
参加できるみんなで作る体験型の作品
その作品はお客さんも参加できる体験型のものです。いや、体験というよりは一緒に作品を更新していける作品でした。
2m四方はあるだろう四角い立方体の枠にたくさんの紐が引っかかっています。
その様子はカメラで撮影され、加工された形が別のスクリーンに歪んだり縮んだり膨らんだりしながら投影されています。
この作品は最初の枠ほど準備されていたのでしょうか、日々、お客さんが手を加えることで形を変えていく作品でした。
さらに面白いのは、これはお二人の共同作品として展示されているのですが、二人とも別々のタイトルを付けているのです。
平川紀道さんは、「ひもと重力による構造形成」。
野村康生さんは、「力が生まれるところ」。
作品はひとつ、タイトルは二つ。
例えるならば、「おはぎ」と「ぼたもち」、「マック」と「マクド」。
ちょっと違いますか??
8月29日まで開催していますので、気になった方はぜひ見に行ってください。
8月11日にはお二人の対談もあるらしい!!
YouTubeでも配信が見れるらしいので遠方の方もぜひ!!
展覧会紹介動画も見るとわかりやすい!!
企画展「平川紀道・野村康生 既知の宇宙 未知なる日常」
[開催場所]島根県立石見美術館
島根県益田市有明町5-15「グラントワ」内
[開館時間]9:30~18:00(展示室への入場は17:30まで)
[休館日]毎週火曜日
[会場]展示室A、B、C
益田市でのArt Drive【後編】でした。
【前編】【中編】もぜひご覧くださいね!!