「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 ~ 美術と工芸を結びつけようとした先輩たちの奮闘 ~

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展  美術

今日は島根県立美術館で開催している「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展です。それぞれ知っている単語や言葉(人名)ですが、〈と・から・まで〉と平仮名でつながるだけでグッと意味が広がります。作品群を見て、ギャラリートークで学芸員さんの話を聞いて驚きばかりでした。

ウィリアム・モリスは社会主義者だった。

現在は〇〇主義者というととても強めのワードに聞こえます。熱烈に〇〇を信奉しているような。思想・信条・政治的立場などを表明するときに使われそうですが、ファンダム経済(推し活の表と裏)に置き換えると理解がしやすかったりします。

モリスが生きた19世紀のイギリスは、産業革命によって社会が劇的に変化しつつありました。機械生産によって安価で大量に商品が供給できるようになった時代です。しかしながら、品質は粗悪なものが多かったり、労働者の働く環境が悪かったり、負の側面も顕在化していました。

モリスたちはそれに対抗するために中世ヨーロッパの職人による手仕事の復興を掲げて、美と品質を兼ね備えた製品とそれを生み出す職人たちを守るために運動を始めたのです。それは急速に拡大していく資本主義に対しての反旗でもあったのです。モリスが社会主義の精神の持ち主であったことも納得できます。

さらに当時の産業革命に当たるものとして、現在では生成AIが真っ先に思い浮かびます。自分はAI革命の波に上手に乗れているのか。AIの普及によって人間がしていた仕事がなくなってしまうのではないか。知らないうちにAIが人間を支配しているのではないか。そんな社会の変化に不安や恐れを抱いている人も多いのではないでしょうか。AIが日常に染まったときに、それはどんな世界になっているのでしょう。

少し先の未来を想像することで、モリスたちがアーツ・アンド・クラフツ運動で実現しようとしていた気持ちが少し分かる気がします。

アーツ・アンド・クラフツ運動の名前の由来を辿る。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 

アーツ・アンド・クラフツ運動はモリスの天才的な閃きで始まったわけではありません。調べてみると1887年に設立された「アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会」から、アーツ・アンド・クラフツという言葉は一般的に広まったようです。

モリスが思想や信条を大いに盛り込んで建てた自邸。レッドハウスの名で今も残る家が完成したのが1859年頃です。

その土台となり、モリスが師事し影響を受けたラファエル前派兄弟団が1848年に結成され、さらにその思想的な支えになったジョン・ラスキンの「近代絵画論」は1843年から出版されていきます。

中世ヨーロッパの伝統的なゴシック建築を参考にしたレッドハウス。デザインの源泉を辿れば初期ルネサンス期にまで戻ってしまいます。なお、デザインという言葉ですが、図録の序論によると、『「デザイン」の名称は1837年にロンドンに創設され、その後、マンチェスター、バーミンガム、グラスゴー、ダブリンなど、イングランド、スコットランド、アイルランドの諸都市に次々と開設された官立デザイン学校の影響が大きかった』と書いてありました。ウィリアム・モリスが生まれたのは1834年です。

今回は年表も人物相関図も入り組んでいて理解するのが本当に大変です。

ギャラリートークで椅子のカタチに心が踊る。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 

会場に入ると目の前にドーンと現れる鮮やかな壁紙群。植物をモチーフにしたデザイン。

アーツ・アンド・クラフツを象徴する作品が出迎えてくれますが、撮影スポットはここまで。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 
柄の模様が、大きくてびっくりした!

ギャラリートークでも解説をしてくれた椅子の話です。椅子の展示があると、「あぁ座ってみたい」と思います。やっぱり椅子は見るばかりではなくお尻を乗せてみないと、とはいえ貴重で希少な椅子に座るのは難しい。

本展はアーツ・アンド・クラフツ運動が歴史の中で広がっていく構成です。ウィリアム・モリスらの思想や作品が徐々に世界に展開していくような流れです。最後の4章は「アメリカでのアーツ・アンド・クラフツ」です。この1章と4章に象徴的な椅子がそれぞれ展示されています。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 
※チラシ参照

1章《サセックス・シリーズの肘掛け椅子》おそらくフィリップ・ウェッブ(1860年頃)

曲線を装飾的に用いたアール・ヌーヴォー風の椅子です。優美で軽やかさを感じます。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 
※図録表紙を参照

4章《スピンドル・サイド・チェア》グスタフ・ステッィクリー(1907-1910年頃)

こちらの椅子は角がしっかりとある直線的でガッシリとした丈夫そうな椅子です。電球を交換するときに乗り上がってもグラグラしません。

アメリカでのアーツ・アンド・クラフツ運動は機械生産の許容度が広がりつつありました。モリスの時代からは工業機械の性能も上がっているはずで、大量生産とはいえ品質も少しずつ向上しているのでしょう。また、アメリカでは消費者の意識も工業製品に寛容だったのかもしれません。本展ではフランク・ロイド・ライトに着目して紹介していました。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 
美術館外の看板より。妻はこの椅子がかわいかった!と言っておりました。

今にも繋がっている。

アール・ヌーヴォーよりもアール・デコの方が好き。幾何学模様の直線のデザインがいいよね。なんて、歴史の変遷に思いも馳せずに気軽に言っています。

AI、SDGs、宇宙旅行。これだけ情報が手に入りやすくなっているのに、知らないうちに気づいたらそんなことになっていたの、みたいに進んでいる今。

目に見えないものがどんどんと発見や発明されて、それが席巻しているような今。

ウィリアム・モリスだったら肯定するのか、それとも徹底的に対抗するのか、それを想像することがアーツ・アンド・クラフツ運動を続けることになるかもしれません。

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展
グッズもかわいい素敵なものが揃っておりました!メガネ拭きがあったのは嬉しかったな〜

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展について

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展 

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展

会期:2026年9月11日(金)~11月3日(火)
場所:島根県立美術館

「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展
美術館外にもフォトスポットがありますよ!記念にぜひ!
アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで | 企画展 | 島根県立美術館
宍道湖岬に立つ島根県立美術館は、水との調和をテーマにした美術館です。国内外の絵画をはじめ、版画、工芸、写真、彫刻などを展示しています。