2024年のアートライフは、東京から!
年が明けてからは少し経ちますが、アート系の記事は本年はじめてになります。 昨年度に引き続き今年もたくさんのアートに触れていきたいと思っています。 さて、今年最初の投稿は東京都練馬区にあります「ちひろ美術館・東京」です。帰省を兼ねて新年早々に行ってみました。
そこは住宅街に溶け込む美術館
西武新宿線の上井草駅を下車、北口方面に向かいます。初めて来る場所なので地図アプリを頼りに歩きました。途中には電信柱などに美術館を示す看板が掲示されていました。徒歩でおよそ七分、もうすぐのはずだけど、と思っていると落ち着いた赤色の壁が見えてきました。本当に住宅街の風景に違和感なく建っています。
ちひろ美術館・東京を設計したのは?
美術館の名前になっている“ちひろ”は絵本作家の“いわさきちひろ”さんです。いきなり謝ってしまいますけど、ほとんど詳しくはありません。黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の表紙の絵を描いた人という、もう初歩中の初歩の知識しかありません。それなのになぜ今回訪問したのかといいますと、現・美術館を設計した建築家が内藤廣さんであるからです。内藤廣さんについては昨年度に島根県立石見美術館でご本人の展覧会がありました。そのときのレポートはこちらです。
この展覧会において「ちひろ美術館・東京」も建築模型やご本人の解説含めて展示されていました。内藤廣さんの建築物は美術館に限らず鉄道の駅などもあり全国で見ることができます。年末年始の帰省に合わせて関東地方にある内藤建物のどこかを見に行ってみようと思い立ちました。開催中だった展覧会は後述しますので、まずは美術館について少し書きます。
内藤廣展図録より~その1~
(中略)~中庭に向かっては開放的にするため、1階の柱には熱押形鋼の十字柱を採用し、軽快に見せている。
内藤廣展図録より
この内装の柱を説明した文章が気になり館内に入ったら柱を確認しよう、と意気込んでおりました。
形状が十字でしかも素材が鉄骨となれば冷たい印象を抱いていたのですが、実際に間近で見るとそんなことはまったくありませんでした。柱としての威圧感もなく、角は丸みを帯びたデザインになっているので、鉄骨の堅苦しいイメージもなくむしろ建物が角張っているせいか内装に柔らかさを与えていました。
ちなみに館内の見取り図はこんな感じです。
来館時に開催されていた展覧会
会期:2023/10/7~2024/1/14
「いわさきちひろ やさしさと美しさと」
いわさきちひろさんの優しく温かい眼差しで描かれた子供たちの絵がたくさん飾ってありました。常設でアトリエが再現されているのですが、タイムスリップした感じになってここでたくさんの絵が生まれたのだと思うと感慨深かったです。
「ちひろ美術館セレクション 2010→2021 日本の絵本展」
10年を区切りとする絵本を紹介する展覧会です。今回が4回目ということですが、コロナ禍の影響のため3年の延期を経て開催されました。2010年から2021年に出版された絵本から注目を集めた絵本や今後も活躍が期待される作家の作品が紹介されています。それぞれ数枚の原画と合わせてその絵本も自由に閲覧することができました。普段はあまり絵本を見ませんがパラパラッとめくればすぐに読み終わってしまいます。しかし絵の細部をよく観察して添えられている文章を噛みしめて、再び前のページに戻ってみたりするとどれも奥深い世界に連れて行ってくれました。
内藤廣展図録より~その2~ 外壁の裏話
内藤廣展の展示および図録にも書かれていた文章からもう一つご紹介。
館長の黒柳徹子さんは、外壁は元気が出る赤がいい、といっていたんで少し困ったけど、当時愛用していた南米インディオの肩掛けバックの縞模様の赤、これが自然染料を使ったなかなかいい色で、これですね、っていって決めてもらって外壁の色になった
内藤廣展図録より
2002年に竣工されているので当時の赤色からは変わっているとは思いますが、もともとはいわさきちひろさんの自宅兼アトリエが建っていた場所です。隣家も近く住宅街の中にあって明るい赤色ではとても目立って浮いた感じになってしまいそうです。しかし現在の赤色はとても落ち着いています。内藤廣さんの代表作の一つである島根県立石見美術館(通称グラントワ)を見たことのある自分としては、石州瓦の外壁をついつい思い出してしまいます。周囲の環境に配慮した馴染む建築が本当に上手な方なのだと感心するばかりです。
ちひろ美術館について・東京
ちひろ美術館・東京
住所:東京都練馬区下石神井4-7-2
TEL:03-3995-0612
それでは本年もどうぞよろしくお願いします。