しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで~島根県立古代出雲歴史博物館へ!島根に船が、電車が、自動車がやってきた物語を見に行きました

しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで美術
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先日、島根県立古代出雲歴史博物館で開催していた企画展「しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで」を見に行きました。
※会期 2023.7.7(金)~9.3(日) 

本展は島根の交通の歴史と、その交通の変遷が人々の生活にどのような影響を与えたのかが分かる面白い切り口の展覧会です。クロニクルとは年代記や編年史と訳されますが、まさに約250年前から続く交通と人々の暮らしぶりが垣間見える展示でした。ゆっくりじっくり鑑賞したら半日はかかりそうです。

図録も買ったので、帰ってからの復習も万全です。今後、県内を旅行する際の雑学知識が詰まっている一冊です。
それでは展示品のいくつかをレポートしていきます。

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まずは船から

江戸時代の大型の輸送手段といえば船でした。北前船は有名ですね。山陰地方や瀬戸内海方面では、どちらかというと中小型の弁才船(べざいせん)と呼ばれる帆走性能の高い廻船が主流になっていました。その様子がよく分かる船絵馬が波根八幡宮に奉納されています。

しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで
船絵馬(弁才船)


島根県内での北前船の寄港地としては、浜田市の外ノ浦(とのうら)港が有名ですね。また、温泉津港からは石見銀山の銀が輸出されてきました。そのほか、今も伝統工芸としても残る石州瓦や石州和紙なども船に積まれて大海原へ出て行ったのかもしれませんね。

鉄道は移動を楽しむ乗り物へ

さて、お次は鉄道です。島根県に限らないですが、地方の車社会は根強いです。しかしながら、たまには電車旅も楽しいものがあります。同じ日本海の景色でも、車と電車の窓からでは違って見えます(※個人の見解です)。それに乗車しながら食べる駅弁も楽しみのひとつですね。
日本全国に鉄道の建設が進められた明治時代、島根県でも明治41年(1908年)頃から本格的に開通されていきます。はじめは官設路線がメインでしたが、明治43年(1910年)に軽便鉄道法が公布されると私設路線の計画も増えていきました。現在の一畑電鉄やJR木次線の前身となった簸上(ひかみ)鉄道です。簸上鉄道は計画路線図や沿線名所案内図などの資料も展示されていました。
ちょっと話が変わりますが、奥出雲町の「鬼の舌震い」に紅葉を見に出かけたことがあります。そのそばには、たたら製鉄や日本庭園で有名な「絲原(いとはら)記念館」があります。

ちょっと時間の都合で行けなかったのですが、この絲原家が簸上鉄道の建設に尽力していたことを初めて知りました。絲原記念館には当時の資料が多数所蔵されているようです。常設展示されているかは分かりませんが、ますます行ってみたくなりました。
鉄道の黎明期では、駅と駅をつなぐ、線路をひく、それまでなかったものが出来ていく感動があったのではないかと思います。そして、現在では全国的な観光列車ブーム。移動そのものを楽しむことも鉄道の醍醐味のひとつとなっています。鉄道の楽しみ方は十人十色ですね。

自動車が身近になる前の話

しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで、A型フォード

そして、海を渡って自動車がやってきます。写真はA型フォードです。レトロなものがたくさんある、福山自動車時計博物館の所蔵車です。本展覧会の目玉展示の一つとなっています。

こういうデザインの車は、今では逆に作るのが難しいのでしょうか。お洒落で格好いいと思いますが。
ある映像作品に目が止まりました。「中国地方自動車旅行映像(三井高公)」という展示です。三井総領家(北家)第11代当主、三井高公(みついたかきみ)氏らが昭和8年(1933年)におよそ15日かけて中国地方を自動車で巡った旅行の映像です。音声もなく画像も粗い箇所はありますが、当時の様子を知るには貴重な資料と思いました。しかし、帰ってから図録を読んでみると、様々なデータを詳細に記録していることを知って驚きました。お金持ちの優雅な自動車旅行の思い出の記録を超えた、将来を見据えた資料であったことを知りました。我がブログも後生に残る資料たり得るか、と少しだけ考えてみました。
また、写真撮影が不可の展示でしたが、「フォード特売会の写真」がインパクトありました。昭和3年(1928年)に浜田市殿町で撮影された写真です。普段は商店が並ぶ通りなのでしょうか、ずらっとフォードが9台ほど展示されて大勢の人が見物に来ている写真です。とにかく実物を見て触れてもらおうという気概が感じられる一枚でした。

交通の発達で増えた観光地

電車網が増え、自動車も身近な乗り物になると、どこかへ出かけよう、旅行に行こうという意欲も増してきます。そんな消費者心理を刺激するポスターやパンフレット、ガイドブックなどもどんどん出版されます。大正ロマンを代表する画家の一人である杉浦非水の展覧会に行った際に、おしゃれなロゴやイラストがデザインされたポスターや冊子を見ました。

それらを見るだけで旅行への気分を盛り上げてくれます。駅弁の掛紙(包装紙)がスクラップされたコレクションも展示されていて、大切に保管しておけば何でも貴重な資料になるもんだと感じました。

誰でも参加できるクイズラリー

展示品の中に4箇所、それにまつわるクイズが潜んでいます。注意深く歩いていれば見落とすことはないでしょう。専用の回答用紙をもらって、クイズに回答していきます。情報交流室で答え合わせをさせてもらい、全問正解ならオリジナルシールをもらいました。なかなか、カワイイです。 

しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまでのクイズラリー

島根県と交通の歴史のくくり方でどんな展覧会になっているのだろうかと楽しみと心配が半々で向かいましたが、なかなかに多方面から交通にまつわるものを集められていて興味深く見ることができました。
これからも「そんな展覧会するのか」、とびっくりさせてくれる企画展を期待しています。

企画展「しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで」について

しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで

企画展「しまね×交通クロニクル 北前船からフォードまで」
会期:令和5年7月7日(金)~9月3日(日)
※会期中の休館日:7月18日(火)・8月8日(火)
9:00~18:00(最終入館17:30)

開催場所:島根県立古代出雲歴史博物館
詳しくはこちらをご覧ください。

企画展「しまね×交通クロニクル -北前船からフォードまで-」|島根県立古代出雲歴史博物館