益田市 Art Drive【前編】雪舟四大庭園の医光寺、萬福寺へ~庭時間を愉しむ

萬福寺(島根県益田市)名建築
広告

久しぶりに益田市までアート巡りに行ってきました。
今回は、内容盛りだくさんのため、前編・中編・後編でお届けします。

さて、益田市は柿本人麻呂や雪舟の所縁のある場所が多く、歴史好きには見どころがいっぱいな所です。
前編はその雪舟にまつわるお寺に行った話です。

広告

雪舟庭園を見る~いま、雪舟の理由

雪舟(1420~1506)は室町時代の後期に活躍していた人です。
生まれは岡山県総社市と伝えられています。
明にも渡り、当時は最先端の禅の教えや水墨画の技術も学びました。
また、日本各地も旅をして、行く先々で絵や庭園を作ってきました。

そんな雪舟は2020年には生誕600年を迎え、その年は色々と展覧会もありました。
少し遅れてマイブームが来てしまいましたが、それは今年開催される「李禹煥(リ・ウファン)展」に行きたいなあと思っているためです。

兵庫県立美術館開館20周年記念 李禹煥 展覧会ホームページ
国際的にも大きな注目を集めてきた「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936年生)の大規模な回顧展を開催します。

以前の日曜美術館で李氏が出演された回があり、そこで雪舟が取り上げられていました。
雪舟に触れることで、李禹煥の作品への理解も深まるんじゃないだろうか、という安直な気持ちで雪舟庭園に向かうことにしました。

雪舟四大庭園とは

萬福寺

雪舟が作ったとされる庭園のうち、雪舟四大庭園として伝わっている場所があります。
・常栄寺(山口県山口市)
・旧亀石坊庭園(福岡県田川郡添田町)

そして、残る二つはなんと島根県益田市にあります。
・医光寺
・萬福寺

この二つの寺は車で5分ほどの距離です。それぞれ庭園を見るためには拝観料500円(一般)がかかります。

医光寺へ~庭を眺めてみる『鶴はどこに⁉』

まず向かったのは医光寺です。
お寺の中に入る前に立派な総門がお出迎えしてくれますが、この門は元は七尾城の大手門であり、関ヶ原の合戦の後に移築されたようです。

島根県指定有形文化財。
とっても立派で見ごたえがありました!

医光寺
立派な総門!!
医光寺
下から見た様子
医光寺
横から見た様子
医光寺


寺内も由緒ありそうなものがたくさんありますが、本日のメインは庭園ですので、先に進みましょう。

医光寺
廊下から庭に出たところ
医光寺
和室からの景色も素敵だった


医光寺の庭園は裏山の斜面を利用したかたちで、池から目線が上に誘導されるかのごとく縦に長い絵画を連想させます。

医光寺
春には桜がきれいに咲くんだそう


大きな枝垂れ桜がどんとそびえて春には満開の桜が、秋には向かって左側のモミジが紅葉を楽しませてくれます。
庭園には鶴・亀が配された武家様式になっています。
鶴や亀は長寿や繁栄を意味すると思いますが、この寺は元は崇観寺と呼ばれ、この地を治めていた益田氏によって保護・援助されていました。

医光寺
こちらが亀

事前に少し調べてから行ったのですが、池の中にある亀はすぐに分かったものの、鶴がどこにいるのか分かりません。
気になったので帰り際、お寺の方に尋ねてみると一緒に庭園まで着いてきてくださり、教えてくれました。
なんと、池の形が鶴を模しているというのです。鶴の中に亀がいる設定です(設定なんて言葉は不適切かもしれませんが)。

医光寺
池が鶴とのこと


ただ、真上から池を見ることはできませんので、う~ん、こっちが頭だろうか、とか縁側をウロウロしていました。

萬福寺へ~作っていた当時その日を思い浮かべてみた

萬福寺

午後からの予定もあるため、次の目的地である萬福寺へと移動します。
益田川沿いに建つこのお寺は門をくぐるととてもすっきりとした印象を受けます。
平屋建ての本堂は正面に障子扉が等間隔に並び、モダンアートのような雰囲気もあります。
本堂前はグラウンドと間違えてしまいそうな広い空間があり、一般的なお寺の感じとはどことなく違います。
敷地の外にある駐車場から院内までは塀沿いを歩きましたが、そんなに広い面積には感じませんでした。
インターネットにあがっている写真を見ると、なかなか広いように思えたので少し不安になります。

萬福寺
萬福寺

受付ではお寺の方が丁寧に色々と説明してくれました。
寺の柱の建材、障子扉のデザイン、幕末の長州征伐の戦いでできた傷跡、装飾に描かれている龍の爪の数、など。

萬福寺
とにかく柱が立派!!
萬福寺
柱にある幕末の長州征伐の戦いでできた傷跡、残ってるとは…びっくりしました。
萬福寺
萬福寺


そして、いよいよ庭園へ。
こちらは医光寺とは異なり寺院様式で、須弥山の仏教の世界観を象徴する石庭になっています。

萬福寺


リーフレットには面積が1421㎡(430坪)と書かれてありますが、いまいちピンときません。
しかし、実際に目にすると、予想を覆すごとくに横に広い、石の配置も余白を楽しむ日本画を見ているようです。
山の傾斜を利用して作られた医光寺庭園を見た後だからかもしれません。
わざと外から見ないようにして、庭園は本堂からのみ観賞できるつくりはもしや雪舟の作戦なのかもしれません。

萬福寺

石にはそれぞれ名前が付けられていて、それは禅の教えに倣ったものです。
私はそのあたりのことはまだ不勉強なため、「お~、なるほど」みたいな感想は得られなかったのですが、
はじめに説明を受けたときに、変に先入観をもって、例えば雪舟の意図を理解しようと無理に考えなくていいですよ、と言われました。
最初は素直な気持ちで、雑念を払いのけて、庭に向き合ってくださいと。
それで私はリーフレットを閉じて、ただ何となく眺めてみるといつしか室町時代にタイムスリップした気になりました。
そこでは、雪舟の指示を受けている職人たちの姿が見えます。
「もう少し右へ」とか、「それとあれを入れ替えてみようか」とか、石の配置を試行錯誤している彼らの姿が見えました。

萬福寺(島根県益田市)
スタンプも置いてあったので記念に押しました!

益田市にはその他にも日本遺産がたくさん

益田市日本遺産

医光寺、萬福寺はもちろん、日本遺産に認定されていますが、その他にも5か所あるそうです。
日本遺産巡りをするのもおすすめですね。

中編・後編もお楽しみに

本日はここまでです。
お読みいただきありがとうございます。
中編・後編は舞台をスイッチ。島根県立石見美術館へ向かいます。

【医光寺】
島根県益田市染羽町4-29
駐車場:有

【萬福寺】
島根県益田市東町25-33
駐車場:有