中国地方で初上陸!テオ・ヤンセン展へ〜島根県立美術館

テオ・ヤンセン展美術
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風を食べて、砂浜を歩く、生命体~ストランドビースト

普段は砂浜で風を食べながら生活をしているストランドビーストたちが、島根県立美術館にやってきました。中国地方では初上陸です。プレイベントでは稲佐の浜や松江城で歩いている映像がニュースで流れていました。
美術館の中には日本初公開の作品を含めた14点がドンと待ちかまえています。日常では見ることのない形と大きさの物体が、目の前で動いたら大人も子供もびっくりして見入ったしまいます。「リ・アニメーション」というパフォーマンスで、今回は3点がスタッフの手を借りて定期的に動いてくれます。子供たちを夢中にさせる展覧会は、夏休みにはもってこいです(建物の中は涼しいし)。写真や動画の撮影も自由です。今回はほとんど予習をして行かなかったですが、予想以上に好きになりました。  

テオ・ヤンセン展
入り口入ってすぐに展示してあったビースト
テオ・ヤンセン展
三角形の箇所・・・一見、頭のように見えたんだが、尾(しっぽ)。フリフリ動く様子を見ることができた。
動かすことで、人間に注目してもらい広めてもらうのが狙い。かわいかった。
テオ・ヤンセン展
日本初公開のものもあった。個人的(妻)が一番好きだったビースト。
テオ・ヤンセン展
アニマリス・スクイーラ・・・大きすぎて全貌が上手に撮影できなかった
テオ・ヤンセン展
ビニールテープもバキバキに貼ってあった。
テオ・ヤンセン展
黒い足元のところは切り替えができて、前も後ろも進めるようにできている。
テオ・ヤンセン展
後ろからの全体像はこんな感じ

進化するストランドビースト

テオ・ヤンセン展
年表はとっても大きなもので、全体は撮れませんでしたので、一部

館内には制作された作品群の年代表が掲示してありました。それは大昔の恐竜が住んでいた頃の地球を彷彿とさせていました。あるいは逆に、もっとずっと先の未来の地球の姿なのかもしれないと思わされる面もありました。まるで、『風の谷のナウシカ』や『北斗の拳』のような。または、これは地球ではなく、遥か遠い別の惑星の話なのかもしれません。テオ・ヤンセンが名付けた作品や時代の言葉は、その意味するところがしっかりあります。最初からどこまで考えていたのかはわかりませんが、とにかく壮大極まりない物語を描いています。それは単純に作品の見せ方が上手いとか、エンターテイメント性に優れているなど、一言で表すのもおこがましい。テオ・ヤンセンは現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと言われ、科学と芸術の融合された作品が大いに影響しているのでしょうが、展覧会を見るとアートでは括られきれない、時代や文明みたいな大規模な何かに挑んでいるようにも思いました。 

テオ・ヤンセン展
チューブで曲線を作るのもなんだか生命体だからなのか、まるで大きな蛇のように見えた。

リ・アニメーション~再生するストランドビースト

テオ・ヤンセン展
リ・アニメーションの様子・・・ストランドビーストが・・・下の写真へ
テオ・ヤンセン展
目の前まで動いくのをみれます!!結構最初びっくりしました!!


展示作品の中で、実際に動かしてくれるパフォーマンスがあって、それを「リ・アニメーション」と呼んでいます。島根会場では3体の作品が、公表されている時間に合わせておよそ15分ほど目の前で動いてくれます。写真や動画の撮影も可能で、その動きはほとんどが手軽に購入できるプラスチックチューブで出来ているとは思えない、本当にどこかにいる生き物に見えてきます。しかし、このイベント、なぜ「リ・アニメーション」と呼んでいると思いますか?訳すと「再生」の意味を含んでいますが、いったい何からの再生なのでしょう。 
オランダの砂浜に放たれたストランドビーストは、一定期間、風を食べながら砂浜で生活します。しかし、その暮らしは永遠ではなく、役目が終わったと見なされるとボーンヤードという作品の保管庫のような場所でしばしの眠りにつくのです。しかし、ある日、新しい役目を与えられて眠りから起こされます。目覚めた場所は砂浜ではなく、例えば美術館でした。砂浜以外では自然の風の力で動くことはできませんが、オランダにはなかなか行くことのできない世界中の人々のために、再び命を取り戻してくれるのです。これまた壮大な旅の始まりです。 

テオ・ヤンセン展
こちらのストランドビーストは前後動くことができるものだった。砂浜を歩いていて、波の水が当たると海に入らないよう、Uターンできるというものだった。足が方向転換するのだが、カチャカチャと変わる瞬間がおもしろかった!!

素材へのこだわり~美しからざる美しさを放つストランドビースト

テオ・ヤンセン展
工房の様子が展示されていたコーナー

 
ストランドビーストが動くところはもちろん本展の見どころの一つですが、素材やアトリエ写真が展示しているコーナーもメイキング系が好きな人は楽しめるはず。ストランドビーストの骨組みとなっているプラスチックチューブ、ウレタンチューブ、結束バンド、ペットボトル。

テオ・ヤンセン展
材料など展示してあるところが見ごたえあり!
テオ・ヤンセン展
チューブをの形状を変化するために使っていた木枠
テオ・ヤンセン展


手作りされた木枠を使って、プラスチックチューブの形状を変化させるサンプルが展示されていました。プラスチックチューブにこだわらなければ、もっと加工しやすい素材はいくつもあるだろうに、なんて思いました。ただ、このパネルを見ていたら、現代アーティストの大竹伸朗の作品みたいだと思ってしまいました。館内で流れていたテオ・ヤンセンのインタビュー映像で、新しいアイデアが思いついても、先の四つの素材で実現できないとわかったら断念するか、改めて別の方法を考えると話していました。歩行機能を最優先にしてデザインされているストランドビースト。近くで見ると確かに結束バンドの先がピロンピロンとあっちこっちに向いています。細かい部分にばかり目をやっていると、美しいとは思えません。しかし、総体としてのストランドビーストは美しさとは何だろうか、という基準が分からなくなってくるアート性を有しています。それは一つ一つの作品を見るばかりではなく、名前の付け方からストーリーの組み立て型までをも含めて、テオ・ヤンセンのアートここにありと思えてきます。 

大人も子供も楽しめる、色んな見方のできる展覧会でした。美術展ではありますが、博物館的な要素もあります。文系も理系の人も大いに刺激を受けることでしょう。

テオ・ヤンセン展
とにかく結束バンドがそのままむき出し、特に端を切らずにピロンピロンと出ているのも面白かった。
テオ・ヤンセン展
チューブぐるぐるな感じ
テオ・ヤンセン展
足元のタイヤもチューブで作ってる

テオ・ヤンセン展について

テオ・ヤンセン展

テオ・ヤンセン展
開催期間:2023.7.7(金)~8.28(月)

開催場所:島根県立美術館
リ・アニメーションは時間が決まっていますので、美術館のHPをご確認の上ご来場をおすすめします。