見に行ってきました!「第67回日本伝統工芸展」in 島根県立美術館

第67回日本伝統工芸展美術
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12月25日まで島根県立美術館で開催されていた第67回日本伝統工芸展に行ってきました。
開催内容などは以前のブログ記事をご覧ください。

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はじめに-展覧会の感想-

それでは自身2回目の日本伝統工芸展、第67回展は入選作全564点(前回展578点、以下数字のみ)の中から、重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品42点(46)をはじめ、受賞作16点(16)、地元山陰在住作家の入選作12点(9)を含む270点(280)を展示。


今年はコロナ禍の影響のため、開催そのものを中止するかという議論もあったようです。作家さんにとっては創作に大きな影響があったと「日曜美術館」でも特集されていました。モチーフの再検討から、もしかしたら材料や道具を揃えるのにもいつもと違う苦労があったかもしれません。


そのような中で開催された島根展は、前回よりも展示数は10点少なくなりましたが、地元山陰在住作家の入選作は3点増える内容となっています。


全体的に目にとまった作品群(特に陶芸)としては、左右非対称(アシンメトリー)というか、正面がどこなのか(そもそも正面があるのか)、いったい何面体なのか、そんな形状の作品が気になりました。ちょうど埼玉県所沢市に新しく開館された、隈研吾さんの設計した角川武蔵野ミュージアムと印象が重なったからかもしれません。


きれいな曲線を描いた作品ももちろん美しいものがたくさんありましたが、角ばった作品からは自然物に少しだけ人間の手を加えました感があり、それが今の自分の気持ちをじりじりと振るわせて、じっくりと見入ってしまいました。

地元作家対談イベント鑑賞

行ったその日は会期中の関連イベント、地元作家対談「山陰の伝統工芸 これまでとこれから」が催されていました。
漆芸作家の高橋香葉さん(松江市)と染織作家の松浦弘美さん(松江市)の対談です。

対談というよりは、作家さんの作品の紹介をそれぞれ詳しくお話してくださる、という感じの内容でしたが...

美術や芸術の世界においては作家自らが作品のことを語るのは、良しとする人、そうでない人、いろいろな意見があります。
作家自身でも語りたい人、語らない人、さまざまです。
ライナーノーツ、あとがき、舞台裏、制作ドキュメント...いろいろな言い方がありますが、私は、それが、好きな方です。
最近では漫画家の浦沢直樹さんが企画されている「漫勉」とか、見ています。

伝統工芸においても然り、と感じました。
作家本人の口から語られる表の話と裏の話は、漆芸と染織への入り口がぐっと身近になりました。
伝統工芸とは手間も時間もかかるもの、と分かってはいましたが「え!?そんなに工程があるのか!!」と改めて驚きました。

漆芸作家の高橋香葉さん(松江市) 漆芸‐籃胎(らんたい)‐

詳しくない人間ですから、まずは専門のサイトを見てみます。
日本工芸会東日本支部のHPに漆芸の解説があります。

漆芸とは
まず漆(うるし)の木にキズをつけ、滲み出した樹液を採取し目的別に調整します。

これを接着剤にしたり、塗料として使用しますが、その他に形そのものを造ることもできます。

また装飾材料としても使用されています。漆芸は古来より日本や中国、朝鮮半島や東南アジアなどで発達してきた東洋独自の分野です。特に日本の漆芸は高度な技法が現代に伝えられています。

漆芸はいろいろな素材と道具と様々な技法によって出来上がりますが、ここでは素地、塗り、加飾(装飾)の順に説明します。

素地(きじ)とは
漆塗りをするためには素材を加工し器物(形)にする必要があります。

その器物(形)を素地といいますが、その素材に木材を使った指物・挽物・刳物・曲輪・巻き上げなどの技法を使った木胎があります。また麻布等の布を使った乾漆という素地や竹を編んだ籃胎、紙の紙胎、皮革の漆皮、金属の金胎、陶磁器の陶胎などもあります。

http://kogei-east.jp/shitsugei/

このように漆芸と一括りにしても、器の素材を何にするかでも随分と種類があります。
登壇者のお一人、高橋香葉さんの本展での入選作は「籃胎存清小箱「青葉若葉」」というタイトルです。
この籃胎(らんたい)は前述のとおり竹を編んで器(今回は小箱)を形成します。
しかし竹といっても作家本人が竹ひごから作る場合もあり、特別な鉋(かんな)で厚さを調整していきます。
さらに驚いたことに、竹の節の部分は素材として適さないため、節と節の間が長い竹を自ら探しに行くこともあるそうです。

染織作家の松浦弘美さん(松江市)染織‐ほら絽(ほらろ)‐

続いて染織について触れたいと思います。

鑑賞の手引き
染めには、友禅・型絵染・江戸小紋・長板中形・木版染・絞り染・ローケツ染など。

織物には、紬織(つむぎおり)・錦織(にしきおり)・紋織(もんおり)・羅(ら)・上布(じょうふ)・縮(ちぢみ)・絽(ろ)・縮緬(ちりめん)・綴(つづれ)・風通(ふうつう)など。

他には、組紐(くみひも)・刺繍(ししゅう)・佐賀錦(さがにしき)などがあります。

http://kogei-east.jp/senshoku/

また、同じく日本工芸会東日本支部サイト内の日本伝統工芸展を紹介するページがあります。
そこで、第62回(2015年)の日本伝統工芸展初入選者による作品解説で、松浦弘美さんのコメントが記載されていました。

松浦弘美
ほら絽織菱絽生絹着物「風を纏う」(No.269)
ほら絽織は、隣り合った2本の縦糸を、絡み、もじれさせてから横糸を1段織り込み、さらに次の段でまた同じ縦糸を、絡み、もじれさせる織り方です。

つまり1段の横糸の上下に縦糸の絡みによって小さな隙間を作るのです。この隙間の連続模様を菱形にして、着物全体に菱形が浮かぶように織り込んだものが、ほら絽織菱絽です。初めてほら絽織菱絽に出会ってから長い年月が過ぎました。布としての強さと、透ける美しさの相反する願いを手にするために、生絹の精錬や織り方など、自分なりの工夫を重ねて、のめりこみ、追い求めてきました。

とんぼや、かげろうの羽根に憧れます。夏の風を纏い、爽やかにゆれる着物になれば幸せです。

http://kogei-east.jp/reviews-62nd/

鑑賞の手引きを読んでわかることは、染めにも織りにも種類がたくさんあり、その技法の組み合わせが作家さんの個性となり作品に結実していることです。

前述のコメントでは、「ほら絽織」「菱絽」の技法が説明されていますが、対談ではPowerPointを利用しての説明がありました。
機織り機での工程を真上から見た組織図というものが染織にはあり、一見すると楽譜のように思えました。
着物をつくるための反物の設計図ですが、素人にはなかなかこの組織図だけでは完成形はイメージできません。
「ほら絽織」「菱絽」を文章に頑張って説明してみると、隣合う2本の糸をある地点で交差させていきますが、その間隔・隙間の長さを少しずつ変化させて、「∨」形から「Λ」形へ連続するように縦糸と横糸を動かして菱形を作っていく感じだとお話を聞きながら解釈しました。

対談を聞いてみて

お二人ともに強調していた話に作品の耐久性があげられます。
美術品としてその美しさを鑑賞することが第一の目的ではなく、あくまでも道具として使えるものになっているかが肝心だという話です。
染織でいえば着物として身に付けるうえでの丈夫さ、着こなしやすさなどもしっかりと熟慮して作られています。

どれももちろん展示品なので触れることはできませんが、持ち上げて底を見たり、引っぱってみたり、軽く叩いてみたり、などが出来れば、
目立たないけれどもそれぞれのモノとしての土台的な部分に気づけそうな予感があります。

伝統工芸の楽しみ方は人それぞれです

伝統工芸品を実際に買ってみようと思うと、本当に高価なものは高いです。
たとえ手にできたとしても、使っていて壊してしまったらどうしようと、箱に入れたままになってしまいそうな気もします。
鑑賞用としてコレクションしていくという楽しみ方もあるとは思いますが、この対談を聞いた後だと使い込んでその良さが分かるのだろうという気もします。

山陰や中国地方にも伝統工芸作家さんがたくさんおられます。
その地方に根ざした技法や素材を使った工芸品をこれからも応援していこうと思います。

第67回日本伝統工芸展の今後のスケジュールです。

2021年1月2日~1月17日 香川県立ミュージアム
2021年1月21日~1月26日 仙台三越 本館7階ホール
2021年2月3日~2月8日 福岡三越9階 三越ギャラリー
2021年2月17日~3月7日 広島県立美術館

本日は伝統工芸の魅力をほんの少しだけご紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

しまね暮らし「しまねの美術担当」
アートブロガーの町平亮(マチ ヘイスケ)です。

30代後半から美術にはまり中。
普段はnoteで記事を書いています。
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町平亮(マチ ヘイスケ)@アートブロガー